アメリカは産業構造の転換を世界で最も早く経験している国である。そのため、それが雇用に与える影響もまた大きい。新しい産業が次から次へ生み出されているところはよいが、それが国全体の雇用に対して役立っていないところが問題だ。このところアメリカ企業の株価はかなり戻してきている。しかし人々はあまりハッピーになっていない。企業の利益が向上しても、肝心の生活がよくならなければ意味がない、ということだ。長年、世界をリードしてきたアメリカ。アメリカはいまだすごい国である。しかし一方で、貧富の差、財政赤字、失業率の三つの問題が重くのしかかっている。まずはこの三つの問題について概観してみた。このところアメリカ経済について明るい報道がされることもあるが、まだまだ根本の問題は解決には程遠い。
実はこの三つの問題の中で「貧富の差」の問題がその中心にある。そしてほかの二つの問題も、根っこをたどると貧富の差の問題に行き着くことがわかってくる。現在、アメリカには誰が見ても明らかな貧富の差が存在し、それがさらに悪化している傾向がある。なぜそれが放置されているのか、そしてなぜ我々はそれを悲観的に考えなければならないのか。これについては解読していくことになる。その前に、ヨーロッパの現状について確認しておきたい。ヨーロッパの金融問題はこのところのビッグーニュースとしてマスコミにも大きく取り上げられてきた。しかし、その背景にある事象まで含めて考えないと問題の本質には迫れない。そのところを見ていきたい。
次にヨーロッパの金融危機について、これが起きた背景にはヨーロッパの持つ多様な文化と歴史がある。ドイツを中心とするヨーロッパ北部の国々とギリシャなどの南欧との間には大きな断絶があり、それが今回の問題の遠因となっている。日本では今回のヨーロッパの問題は経済問題とだけとらえがちである。そういう報道のされ方がなされることが多いし、お金の話は人の頭に入りやすいということもある。確かに今の時点ではお金の問題が圧倒的に深刻なことは間違いない。でも、実はこれは単に経済にとどまらず、外交、軍事さらには文化にまで及ぶ壮大な「ヨーロッパ統一への道」の中での一場面と見るべきなのだ。ヨーロッパ統一を進めようとしたところ経済面で大きなひずみが生じ、それがヨーロッパ全体さらには世界全体に波及する大問題になった、ということだ。
ヨーロッパ統一は、ヨーロッパの人々にとって長年の夢だった。その第一の理由は「もう二度と戦争を起こしたくない」というものである。日本人である我々にはなじみにくいことかもしれないが、有史以来ヨーロッパでは各地で戦争を繰り返してきた。「ヨーロッパの歴史は戦争の歴史」とも言えるほど戦争が多発していたのだ。あれだけ狭い土地に多様な民族、言語、文化、宗教が詰め込まれているのだから当然、と言ってよいかもしれない。特に20世紀になって起こった第一次と第二次の二つの世界大戦はヨーロッパの人々の心に深い傷あとを残した。二つの世界大戦はどちらもヨーロッパが起点となり、主戦場となったものだ。
第一次大戦では、フランス、イギリス、イタリアはそれぞれ100万人以上、ドイツは250万人もの犠牲者を出した。第一次大戦のときは日本ではあまり大きな犠牲がなかったので、我々は見過ごしがちであるが、ヨーロッパでは深刻な被害を受けていた。そして第一次大戦後に世界大恐慌が起き、ヨーロッパでは共産主義とファシズムが台頭した当時のヨーロッパで「民主主義が生き残ると考えることは困難だった」とシュロモーアヴィネリ(政治学者)は言う。実際、ファシズムの消滅にはもう一つの大戦が、共産主義の崩壊にはさらに半世紀近くの年月が必要となる。
2015年7月6日月曜日
2015年6月5日金曜日
みなが安心できる暮らしを
日本の金融業は、製造業に比べてこれまで国際競争力に乏しかった。旧大蔵省の護送船団方式で守られていたからである。今後は外資と同じ条件で対等に戦わなければならないが、日本人である限り、すべてに優先して、金のことばかり考えることかはたしてできるのだろうか。とても危ういように思う。融資した企業か赤字で立ち直り不可能とみれば、アメリカの銀行なら、会社をつぶしてできるだけ多く資金を回収しようとする。日本の銀行は、百貨店「そごう」やスーパー「ダイエー」のように、つぶしたらそのもとで生きているたくさんの企業の連鎖倒産が起こることを心配する。なるべくみんなを生かして、被害を最小限にとどめようとする。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長もこの違いをはっきり証言している。彼が当時の宮沢蔵相と日本の銀行の不良債権問題をめぐって会談した際、アメリカの八〇年代の同様な不良債権問題にあたっては、整理した貯蓄金融機関の担保不動産を整理信託公社が安値で売り、不動産市場を動かしたことで問題を早期に解決できたことを宮沢蔵相に話したところ、宮沢蔵相は、それは金融機関の破綻や多くの失業者を生むから日本のやり方ではない、と回答したという。アメリカの銀行は、金のために企業を殺すことをいとわないが、日本の銀行は、会社を殺せない。ちょうど「ペニスの商人」と同じだ。相手を殺してまでも、金を回収するのか、情けをかけるのか。
徳や情を優先する日本人は、同じ土俵に乗ったら勝ち目はない。世界を相手に日本か繁栄するためには、日本の中では日本の価値観を守り、それを堂々と主張し、貫ぎ通す堅固なる思想、信条を掲げ続ける以外に道はないのではなかろうか。さて、ライブドアの堀江元社長は、その後、自社株売却益の不正計上等の罪により逮捕され、二〇〇七年三月には東京地裁より懲役二年六ヵ月の実刑判決が下り、二〇〇八年七月の東京高裁の二審でも実刑判決か言い渡された。道義的な罪から法律上の罪まで突き進んでしまったのは、アメリカ流の株価至上主義にどっぷり浸かってしまったからだろう。また、アメリカ流儀に徹してライブドアに資金を工面したリーマンーブラザーズは、ご存じのとおり、二〇〇八年九月に経営破綻し、今回の世界的金融危機の引き金を引いた。これは偶然の一致ではない。
個人の立場に立った場合、わたしたちのもっとも基本的な望みは満足のゆく暮らしを送ることだろう。貧しくても工夫をすればそれなりに衣食住に満ち足りる生活かできることか基本的欲求であり、それを実現できる環境を用意するのか国家の役目である。しかし、現実には、最近日々の生活に苦労する人々が多くなり、暮らしに不安を覚える人々か増えはじめている。二〇〇八年度の内閣府の世論調査によれば、悩みや不安を感じる人は一九九一年度以降一貫して急増し、二〇〇八年度では70・8%にも達するというひどい状況だ。
悩みは、自分の健康49・O%、家族の健康41・4%と健康に関するものか多いが、いちばんの大きな悩みは、老後の生活の57・7%であり、約六割が不安を覚えている。収入も大きな問題で、現在の収入に32・6%、か、今後の収入には42・4%か不安や悩みをいだいている。残念ながら現在の日本社会においては、国民、か将来に明るい希望をいだき、安心して満足のゆく生活を送る機会かどんどん遠のいている状況なのだ。安心できる生活を送れなくなった国民が増えた大きな理由の一つは、パートや派遣社員などの非正社員が雇用者の三分の一を越えるまでに増加しているからだ。非正社員は、低賃金と契約期間終了後の職の不安に悩まされている。契約期間後の職の保証かなければ、会社に対しても卑屈になり、人間は萎縮してしまう。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長もこの違いをはっきり証言している。彼が当時の宮沢蔵相と日本の銀行の不良債権問題をめぐって会談した際、アメリカの八〇年代の同様な不良債権問題にあたっては、整理した貯蓄金融機関の担保不動産を整理信託公社が安値で売り、不動産市場を動かしたことで問題を早期に解決できたことを宮沢蔵相に話したところ、宮沢蔵相は、それは金融機関の破綻や多くの失業者を生むから日本のやり方ではない、と回答したという。アメリカの銀行は、金のために企業を殺すことをいとわないが、日本の銀行は、会社を殺せない。ちょうど「ペニスの商人」と同じだ。相手を殺してまでも、金を回収するのか、情けをかけるのか。
徳や情を優先する日本人は、同じ土俵に乗ったら勝ち目はない。世界を相手に日本か繁栄するためには、日本の中では日本の価値観を守り、それを堂々と主張し、貫ぎ通す堅固なる思想、信条を掲げ続ける以外に道はないのではなかろうか。さて、ライブドアの堀江元社長は、その後、自社株売却益の不正計上等の罪により逮捕され、二〇〇七年三月には東京地裁より懲役二年六ヵ月の実刑判決が下り、二〇〇八年七月の東京高裁の二審でも実刑判決か言い渡された。道義的な罪から法律上の罪まで突き進んでしまったのは、アメリカ流の株価至上主義にどっぷり浸かってしまったからだろう。また、アメリカ流儀に徹してライブドアに資金を工面したリーマンーブラザーズは、ご存じのとおり、二〇〇八年九月に経営破綻し、今回の世界的金融危機の引き金を引いた。これは偶然の一致ではない。
個人の立場に立った場合、わたしたちのもっとも基本的な望みは満足のゆく暮らしを送ることだろう。貧しくても工夫をすればそれなりに衣食住に満ち足りる生活かできることか基本的欲求であり、それを実現できる環境を用意するのか国家の役目である。しかし、現実には、最近日々の生活に苦労する人々が多くなり、暮らしに不安を覚える人々か増えはじめている。二〇〇八年度の内閣府の世論調査によれば、悩みや不安を感じる人は一九九一年度以降一貫して急増し、二〇〇八年度では70・8%にも達するというひどい状況だ。
悩みは、自分の健康49・O%、家族の健康41・4%と健康に関するものか多いが、いちばんの大きな悩みは、老後の生活の57・7%であり、約六割が不安を覚えている。収入も大きな問題で、現在の収入に32・6%、か、今後の収入には42・4%か不安や悩みをいだいている。残念ながら現在の日本社会においては、国民、か将来に明るい希望をいだき、安心して満足のゆく生活を送る機会かどんどん遠のいている状況なのだ。安心できる生活を送れなくなった国民が増えた大きな理由の一つは、パートや派遣社員などの非正社員が雇用者の三分の一を越えるまでに増加しているからだ。非正社員は、低賃金と契約期間終了後の職の不安に悩まされている。契約期間後の職の保証かなければ、会社に対しても卑屈になり、人間は萎縮してしまう。
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