2014年7月4日金曜日

土地信託構想とその展開

戦後は、戦前と異なって、賃貸用の住宅は、主に政府、住宅公団および地方自治体とその外郭団体などの公的な機関が建築するものが主流となり、民間では各企業が従業員のための社宅を整備するのを除けば、賃貸より自分の持ち家を取得する方に力が注がれてきました。自分の家を持つことはもちろん結構なことですが、すべての人がそうすることができるわけではありません。一方、公営のアパートも戸数に制約があって抽選に当たらないと入居できないのが普通ですし、官舎や社宅に入れるのも当然その勤務員に限られます。そこで、良質でしかも家賃もあまり高くない民営の、いわゆる貸家が要求されるわけです。

ところが、地価や建築費が昭和四十年代になって非常に上がったため、土地から買ったのではなかなか貸家の採算がとれません。反対に昔から、都市の中に土地建物があって、家屋が老朽になったままの地主や、最近発展してきた都市近郊に農業に適さなくなって農地を遊ばせたままの地主もいます。これらの地主で、土地は売りたくないが自分で貸家を建てる資金もないし、また不動産についての知識や経験も乏しいという人が少なくありません。こういう人のために信託を使って、賃貸住宅を建てようとするのが土地信託構想の発端でした。

その仕組みは以下の通りです。まず地主から土地の信託を受けます。これを整地して賃貸住宅を建築します。このとき、地主が資金を持っていれば、それで問題はなく、昔からの不動産の管理信託の形になるのですが、おカネが足りないとき信託会社は外部または金銭信託などで集めた資金を、この信託財産に融資して建築することになります。そうして、これを賃貸し、賃料から元利金や諸経費を払って、あとの収益を地主に分配しようというものです。土地の有効活用の相談、企画から所要資金の調達、建物の建設、管理に至るまで総合的に取り組むこの土地信託構想は、民間レベルでの住宅供給の促進に大いに役立つものとして各界で関心を呼びました。

ところが、依然地価の上昇は著しく、土地は単に持つたまま値上がりを待つ方が得策だという地主の意識が強く、これに加え、用途がもっぱら賃貸住宅に限定され採算面で妙味が少なかったこと、そして信託会社が借り入れを起こし建物を建設、運営することは、いわゆる事業信託(信託会社が受託した財産でいろいろな事業を経営すること)として許されるのか否か明確な結論が出ていなかったことなどから、その実績はわずかに留まりました。現実には、事業信託の問題もあり、地主が借り入れをして建物を建設、これを追加信託する不動産管理信託に近い仕組みが採られました。