2012年7月2日月曜日

製造上のミス

現在飛んでいる機体では、かつてマクダネル・ダグラスのDC-10が問題になった。エンジンの溶接部分の設計ミスが原因で、飛行中にエンジンの回転数が落ち、出力の低下につながるとのことだった。

米国の国家運輸安全委員会の調査では、二〇〇機以上のDC-10から指摘された部分の溶接不良が見つかった。

航空機はハイテク技術が駆使されているだけでなく、数多くの部品が使用されている。ジャンボ機を構成している部品は、六〇〇万点にも上る。

しかも、近年は国際協調が進み、部品の生産は世界中で行われている。航空機事故は世界中で起こる。事故の原因調査には、事故の起きた国、運航エアライン、機体の製造メーカーからの調査団が派遣される。

一見すると、それぞれの分野での最高レベルの専門家が集まり原因調査が進められるのだが、現実には責任問題になると国際的信用に響くことから、原因は自己責任の転嫁、他国への責任の押し付け合いとなるのが現状だ。

人間とコンピュータの不協和音が事故を誘発

最近注目されているのは、人間とコンピュータの不協和音が事故を誘発するケースだ。自動操縦装置はパイロットの仕事を大幅に軽減した。さまざまな計器をいちいちチェックしなくとも、コンピュータが操縦に必要なデータや問題の生じている箇所を表示したり、パイロットの操縦の補助業務をやってくれる。

したがって、離陸し安定飛行に入ってから自動操縦に切り替えれば、コンピュータが飛行機を目的地上空まで安全に飛ばしていってくれるので、パイロットの疲れははるかに少なくなった。

しかし、コンピュータを過信したり、使い方を間違えると大変なことが起こる。一九八三年にサハリン沖で旧ソ連軍の戦闘機によって撃墜されてしまった大韓航空のジャンボ機は、飛行コースを自動操縦装置に入力する際にデータを取り違えたために、機体が通常のコースをそれて旧ソ連領空に侵入してしまった可能性が高い。

九二年にフランスのストラスブール近郊のアンゼーム空港に着陸しようとしたエールアンナールのエアバスA320が空港手前のセン・オディール山の尾根に激突した事故も、自動操縦装置の入カミスが原因だった。

パイロットは降下率モードを三・三度にしたつもりで、緩い角度での降下を意図したのだが、実際には降下速度モード三三と入力してしまったため、A320機は毎分三三〇〇フィートという急な降下をした。

九四年に名古屋空港に着陸の際に墜落した中華航空のエアバスA300機のケースでは、中華機の機長が自動操縦装置を使用して着陸をしようとしたつもりが、誤って「着陸やり直し」のレバーを入れてしまっていた。

機体が上昇する体制にあることを察知した機長は手動で着陸しようと操縦梓を下げたが、飛行機はますます逆らって上昇しようと補助翼を操作し、機長とコンピュータが反目する形となって失速した。エアバス社の旅客機の自動操縦装置は、人間の判断が優先される設計になっていなかったのだ。

米国系メーカーの自動操縦装置は、人間とコンピュータが反目する状態になったときには、コンピュータの方が自動的に解除されて人間の判断が優先される設計になっているのだが、エアバス社の設計は指示(入力)が変更されない限り、コンピュータはあくまでも忠実に業務を遂行しようする(同事故後、日本の指摘を受けてエアバス社も設計を変更した)。

いくら高性能なコンピュータを搭載していても、パイロットとの協調がなければ役に立たない。事故のたびに調査委員会が設けられ、原因が判明すれば対策が打たれるが、機体の進化も激しいために、次々と新たな要因も生まれてくるのは残念なことだ。