2014年7月18日金曜日

進む社会福祉改革

介護保険施設や在宅サービス供給事業者には、ケアマネジャーを置くことが義務づけられています。現在まで約十六万人の人たちが資格をとりましたが、現役の看護婦など在職中の人が多く、実際にはケアマネジャーの仕事には就いていません。ケアマネジヤーの仕事が魅力的なものになるには、介護報酬の引き上げによる待遇改善に加えて。良質なサービスが増えて、適切なケアプランが作成できる介護基盤が整備されることが必要でしょう。

わが国の社会福祉は。いま大きな転換点にあります。社会福祉を必要とする人たちが増えてきたからです。高齢者のみならず、障害者そして児童という社会福祉の主要な対象分野全体で利用者のニーズが増加しています。一方、供給側の態勢はどうだったのでしょうか。従来の福祉制度は、サービスの実施の有無、提供主体の決定、供給量等について行政庁が一方的に決定する仕組みでした(措置制度)。行政処分の一種です。措置の対象者(利用者)が事業者を選択できず、事業者と措置の対象者の間の権利・義務関係が不明確だといわれていました。

措置する場合、具体的には保育所や特別養護老人ホームなどの入所者を決定する過程が不明朗だともいわれています。定員に空きがあれば、そんなに問題はありません。問題は空きがない場合です。大都市部での保育所や特別養護老人ホームには、入所を待つ多くの人がいます。そこで、数年前から社会福祉の基礎構造改革に向けた検討が「中央社会福祉審議会」で検討され、二〇〇〇年の通常国会で「社会福祉事業法」の改正が行われました。福祉の供給側を需要に合わせようという試みがようやく始まったのです。

厚生省の「中央社会福祉審議会・社会福祉構造改革分科会」は、一九九八年六月「社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ及び追加意見)」を発表しました。社会福祉の基礎とは、わが国の社会福祉を形成してきた社会福祉の供給構造のことを指します。主に、①社会福祉事業の範囲の見直し、②社会福祉法人の在り方、③サービス利用の方法(措置制度の見直し)、④権利擁護、⑤施設整備の在り方、⑥サービスの質と効串性の確保などに分かれます。その中で改革の必要性を次のように述べています。

2014年7月4日金曜日

土地信託構想とその展開

戦後は、戦前と異なって、賃貸用の住宅は、主に政府、住宅公団および地方自治体とその外郭団体などの公的な機関が建築するものが主流となり、民間では各企業が従業員のための社宅を整備するのを除けば、賃貸より自分の持ち家を取得する方に力が注がれてきました。自分の家を持つことはもちろん結構なことですが、すべての人がそうすることができるわけではありません。一方、公営のアパートも戸数に制約があって抽選に当たらないと入居できないのが普通ですし、官舎や社宅に入れるのも当然その勤務員に限られます。そこで、良質でしかも家賃もあまり高くない民営の、いわゆる貸家が要求されるわけです。

ところが、地価や建築費が昭和四十年代になって非常に上がったため、土地から買ったのではなかなか貸家の採算がとれません。反対に昔から、都市の中に土地建物があって、家屋が老朽になったままの地主や、最近発展してきた都市近郊に農業に適さなくなって農地を遊ばせたままの地主もいます。これらの地主で、土地は売りたくないが自分で貸家を建てる資金もないし、また不動産についての知識や経験も乏しいという人が少なくありません。こういう人のために信託を使って、賃貸住宅を建てようとするのが土地信託構想の発端でした。

その仕組みは以下の通りです。まず地主から土地の信託を受けます。これを整地して賃貸住宅を建築します。このとき、地主が資金を持っていれば、それで問題はなく、昔からの不動産の管理信託の形になるのですが、おカネが足りないとき信託会社は外部または金銭信託などで集めた資金を、この信託財産に融資して建築することになります。そうして、これを賃貸し、賃料から元利金や諸経費を払って、あとの収益を地主に分配しようというものです。土地の有効活用の相談、企画から所要資金の調達、建物の建設、管理に至るまで総合的に取り組むこの土地信託構想は、民間レベルでの住宅供給の促進に大いに役立つものとして各界で関心を呼びました。

ところが、依然地価の上昇は著しく、土地は単に持つたまま値上がりを待つ方が得策だという地主の意識が強く、これに加え、用途がもっぱら賃貸住宅に限定され採算面で妙味が少なかったこと、そして信託会社が借り入れを起こし建物を建設、運営することは、いわゆる事業信託(信託会社が受託した財産でいろいろな事業を経営すること)として許されるのか否か明確な結論が出ていなかったことなどから、その実績はわずかに留まりました。現実には、事業信託の問題もあり、地主が借り入れをして建物を建設、これを追加信託する不動産管理信託に近い仕組みが採られました。