2015年12月5日土曜日

粗放型経営の落とし穴

「四十数年の建設を経て、わが国はすでに比較的完全な工業体系を形成しており、経済の規模はかなりのものだ。しかし、生産、建設や流通などの各分野で、資源の消費が多い、資金の回転が遅い、損失・浪費がひどい、経済効率が低いといった問題が際立っている。こうした粗放型の成長方式は、当面の経済生活における多くの矛盾と問題の元凶となっている。経済規模が大きくなるにつれて、大量の資源消費によって成長をはかることは不可能であり、それは長続きしない」

これは、私か文化大革命の頃から気づき、中国の人に言い続けてきたことと同じである。粗放型経営を根本的に改めるためには、まず企業の経営幹部はもとより、職場の作業員が変わらなければならない。しかし、多くの国有企業にとっては、それは難しい。社会主義経営では、本来倒産はなく、労働者の失業はない建前になっていた。資本主義経営では、いい加減に経営し働いていたら、企業はつぶれ自分も失業するという恐怖がある。その恐怖が、まともな経営と作業ぶりの、かなりのモチベーションではあるまいか。そうだとすれば、倒産も失業もない社会では、どういうモチベーションで人は働くのかという問題が生じる。社会主義はそれを発見できなかった。
 
そうなると機械が時代遅れになろうと、各機械・装置のバランスがどうであろうと、どう作業しようと、人々は無関心に十年一日のように同じ職場で同じ仕事をくりかえし、それで給料を受け取ることになる。中国共産党の首脳部は、最後に、この根源的な壁にぶつかったのである。紡績業などでは、四〇〇〇万錘に及ぶ設備を持っていたのであるが、その大部分は一九六〇年代以前に設置されたもので、しかも、そのなかでも、五〇年代以前の機械が三分の一を占めていた。これでは生産管理のしようもない。

このような機械を思い切って新しい機械に変えなければならないが、それは職場が拒んだ。労働者は長年なじんできた機械のほかは何も知らず、機械が新しくなれば、それについて行くことが出来ないからである。しかし一九九八年一月に、ついに紡績総会の会長は、今後三年間で綿紡錘一〇〇〇万錘を廃棄し、一二〇万人の従業員を一時解雇する方針を明らかにした。