2015年8月6日木曜日

バンカメリカとネーションズーバンクの合併

バンカメリカは、七〇年代にはシティ、チェースーマンハッタンと並ぶ米国の三大銀行であった。当時はマネーセンター・バンクとして、金融のあらゆる分野に進出を図り、全世界に支店網を築いた。しかし、第一章で述べた例にもれず、ラテンアメリカ向け、LBO、不動産などの融資で巨額な不良債権を発生させ、八〇年代後半は赤字を計上、危機的状況となった。

そこで経営方針を劇的に転換して、カリフォルニアの中堅・中小企業や個人向けの銀行に変身すべく、大規模な内外店舗の閉鎖、証券子会社の売却などのリストラを徹底的に行う一方、邦銀なとがら資金調達を行い、ようやく危機を脱した。その後の収益の回復は著しく、規模の利益を求めて九一年に同じ州の大銀行セパック、九四年にイリノイ州の名門コンティネンタル銀行などを吸収して再び拡大路線に転じていた。

一方の目立たぬ存在であったネーションズ・バンクは、八〇年にはわずか資産一〇〇億ドルのノースーカロライナーナショナル銀行(NCNB)に過ぎなかったが、その後サウスーカロライナやフロリダの銀行などを次々と合併して東南部の有力銀行に成長し、かつてチェース・マンハッタンをも買収の標的にしたほどである。

バンカメリカとネーションズーバンクの合併の結果、二十六州に約五千の活動拠点をもつ全国規模の大銀行が誕生することになった。五千~八千人のレイオフを含む合理化により最初の二年で税引き前で二〇億ドルのコスト削減を達成できるという。両者に共通する特徴は、個人・中小企業を顧客とするリテールと、中堅企業を顧客とするミドルマーケットに焦点を合わせて経営資源を集中し、必要なインフラを整備し、規模の利益を合併や買収によって追求してきたことであろう。

反面、大企業向け金融や投資銀行業務、国際金融業務では、必要最小限の参入に止めてきた(バンカメリカの場合は、業績の回復とともにこの分野を復活させていたが)。証券業務に関しては、ネーションズが九八年に買収したモンゴメリー・セキュリティーズと、九七年にバンカメリカが買収したロバートソンースティーブンスが、ともにハイテク産業の新規公開に強いことも興味深い。