2016年2月5日金曜日

予防外交の重要性

報告書は「停戦が合意されても、守られないことがしばしばある」と指摘し、停戦を回復、維持するために、「従来の平和維持軍よりも重装備で」、「常時出動可能な態勢を取り」、「各国の軍隊で広範囲な準備訓練を受けた」平和実施部隊を利用するよう、その検討を勧告している。

憲章第四〇条に基づくこの部隊は、安保理の権限に属し、事務総長の指揮下に入るが、四三条による国連常備軍や、従来型のPKOとは明確に区別される、としている。報告書では明言していないが、平和実施部隊は、武力行使を前提とする点で従来のPKOの枠を外れ、「停戦順守」に目的と範囲を限定した点で、侵略対応型の国連常備軍とは違う、という中間的な性格を持っていると言えるだろう。

第三の「平和維持」、第四の「平和建設」についても、報告書は多くの提言をしているが、従来の方針を踏襲しているという点では、それほど画期的な案は含まれていない。がリ報告書の重要な点は、第一の「予防外交」、第二の「平和創造」に集約されていることを、ここでもう一度確認しておきたい。

要約すると、ガリ事務総長の提言は、次のようにまとめることができるだろう。まず、「予防外交」にあたっては、国内紛争のみならず、国家間紛争においても、当事者の一方の要請のみで事前に国連要員を展開できる道を勧告したこと。「平和創造」においては、常備軍の創設が望ましいが、当面は実現が難しいと判断したこと。さらに、停戦合意を維持、回復するために、従来型のPKOとは区別される「平和実施部隊」の創設を提言したことだ。いずれも、冷戦時代に発展した従来のPKOの概念を塗り替える内容だと言える。